翻訳家に英会話は必要ないと思っていませんか?_文芸翻訳のコツ#14
さて、今日は翻訳家と英会話について考えてみましょう
文芸翻訳家を志すならば、原語(英語)の会話能力を高めるべきだ
全く奇妙なことだと思うのですが、日本の翻訳家の中には、会話が出来ないことをかえって自慢にする人がいます。自分が翻訳した作品の原作者が来日することになり、出版社から通訳を頼まれたりすると、急病になって姿を暗ましたりするのです。
そして、そのことを自慢げに回りに語るのだから始末が悪いと言えるでしょう。僕も会話が苦手なので、英会話学校に通ってbrush upする努力だけは今でも続けています。要するに、そういう翻訳家が言いたいのは、自分は英会話など出来なくても、英語はきちんと読める、理解できるということなのでしょう。そうなると、戦後日本の英語教育の犠牲者といってもいいのかもしれません。
文芸翻訳家の力量が見えるのは「会話文」
僕の経験から言って、地の文章ではほとんど翻訳技術上の差は出ません。一応、プロの翻訳家となればそれが当然かもしれません。しかし、びっくりするほどの差が出るのは会話文です。日・英バイリンガルのある翻訳家が、「日本の翻訳書の中で、会話の微妙なニュアンスをきちんと訳出しているものに出会ったことがない」と書いていたことを思い出します。
次の会話の訳文を考えてみてください
例えば、”What would you say to a hamburger?”という一文があります。これをどう訳しますか?
普通なら、「ハンバーガーでもどうだい?」という訳になるでしょう。しかしそれを文字通りに、「ハンバーガーに何て言うかって?」と訳すこともできるのです。これは簡単な例であって、英文にはまだまだ訳のわからない会話文が沢山あるのです。それを字句通りに訳していいのだとなれば、それこそAI翻訳に埋没してしまうことでしょう。
「会話文」の翻訳を磨くには?
英会話が苦手な皆さん、まずは外国映画を吹き替えなしで見ることから始めてはどうでしょう。ついでながら、僕は辞書で単語を引く場合、必ず発音記号をきちんと書き記すようにしています。そこに気を配ることで、会話能力、とまではいかなくとも、会話の幅が広がることは間違いないでしょう。