名作になるか駄作になるかの分かれ道とは?_文芸翻訳のコツ#6

前回ご紹介した“翻訳力を養う辞書を引くタイミング”を実践していますか?

さて、「文芸翻訳のコツ#5」のつづきです。

名作と駄作を分けるのは形容詞と副詞の訳し方にある

形容詞や副詞は修飾語ですから、文章としてはわからなくても構わない。しかし動詞はある程度必要だ。そうなればあなたの勉強の仕方も違ってくるでしょう。つまり、文章の“動き”を知るために動詞は絶対的に必要ではあるのです。

しかし形容詞や副詞は、文章に“花を咲かせる”という意味からしても、他の品詞以上に必要なものなのかもしれません。

僕は実は、この形容詞と副詞の翻訳に全神経を注いでいます。
だってこの訳し方ひとつによって、
本文が名作にも駄作にもなってしまう場合があるのですから。

こここそが、文芸翻訳を他の翻訳世界から際立たせている大きな理由なのです。原作中心の技術翻訳や映像翻訳とは明らかに違う所でしょう。

どうしても英文がわからないときはどうするか?

また、この作業でどうしても英文がわからない時はどうしたらいいか。その時には、頭から一語一語、何も足さず何も引かず、丁寧に訳してみることです。これは、前回「文芸翻訳のコツ#5」で説明したやり方とは逆に思えるかもしれませんが、なに、同じことなのです。立ち止まって、難しい箇所の英文とじっくり取り組むという姿勢は全く同じです。

誤訳の多くは、当人の思い込みか、文章のどこかの部分を無意識に忘れてしまっていることに依るのですから。そういう意味では、つまりあなたの日・英の言語能力に決定的な差がないのであれば、僕のやり方をやっていただければ、いずれ高みに到達できるはずなのです。